今日は雨降ってるんですけどね、日曜日です。
最近は朝に走るようにしている。いや嘘、歩くようにしている。とかなんとか、「している」とか書いちゃってなんだか、「俺って能動的よ」みたいな感じでムズがゆいんだけど、「朝になると、湧き出る荒ぶる高ぶりに突き動かされるようにして俺は」というふうにしてもいいんだけど、官能小説みたいでやめた。
走っているのは本当。あ、歩いているのが本当。
なぜか? そこに道があるから? 道が無くても歩くことはできる。パンツが無くても暮らすことはできるし、腹の肉が無ければ、と思うことはできる。なんで歩いてるんだろう、あんまり理由が無いなあ。でも朝6時ぐらいの、この時期の明け方の、あの卵の黄身の色した空を見てると、どうも腹が減るんだなあ。
初めて歩いたり走ったりした朝、筋肉痛じゃなくて、モモのあたりがなんだかかゆくなった。慣れないものを体が受け付けなかったのね。
団地のいちばん上まで上がると、瀬戸内海まで見渡せる。夜に来れば、飛行機の光が途切れない岩国基地の敷地が綺麗に浮かび上がる。この場所は最近、といっても5、6年前か、新しくできたバイパスで、まさか自分の家がある団地を見下ろせる日が来るとは思わなかった。
海にちょこんと見えるのは、乳首のようにポコッと盛り上がっている「おっぱい島」、と呼んでいるのはこの辺のクソガキだけで、知性のある僕ぐらいになると、ちゃんと「甲(兜)島(かぶとじま)」という名前なのを知っている。ほらだって、兜みたいな形してるもんね。兜? 見たことあるよ、仮面ライダーで。
この甲島はちっちゃい無人島だが、かつてはこのあたりの漁業権(メバルがよくとれるそう)や採石、採草権、肥沃な土壌を持つこの島の所有を争って、山口県と広島県のあいだで怪我人が出るまでのモメごとに発展したそうだ。
このどこかで聞いたような「島の所有権争い」は明治時代に内務省があいだに入り、なんと島の半分で境界を引くという荒業で決着がついた。つまり現在この島は、半分(北東部)が広島県大竹市、のこり半分(南西部)が山口県由宇町、というなかなかに複雑な歴史を持ったおっぱいなのである。
そんなおっぱい、じゃなかった甲島を遠くに見ながら、ひたひたと僕は、かつて犬の散歩をしながらエロ本落ちてないかと探し続けた、懐かしい道を歩いているのです。
牛の楽園 甲島(中国新聞)
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